ALS嘱託殺人事件は「思想」を動機とする殺人だった
猫にも王を見る権利がある。
A cat may look at a king.
--マザー・グース(英国の民謡)より。
- 「おかねのけいさんできません」男性自殺 障害の記載「自治会が強要」
- 安楽死ハラスメント
- ALS嘱託殺人事件は「思想」を動機とする殺人だった
- 大久保容疑者「老人医療に対して『やるせなさ』を感じていた─」
「おかねのけいさんできません」男性自殺 障害の記載「自治会が強要」
知的・精神障害がある男性(当時36歳)が自治会の役員らに障害者であることを記した書面を書くよう強要され、自殺したとして、男性の両親が自治会と役員らに計2500万円の賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。両親によると、男性は「おかねのけいさんはできません」などと障害の影響についても詳しく書かされ、他の住民にも見せると告げられた翌日に自殺していた。31日に第1回口頭弁論があり、役員らは争う姿勢を示した。
まさに絵に書いたような人権侵害ですね。
「書類を書かせたことが原因で自殺してしまったのか」
「いろいろな積み重ねがあって閾値を超えてしまったのか」
因果関係こそ不明ですが、日本人の陰湿な側面が垣間見れる「闇」が深い事件だという印象を受けました。
少し主語が大きくなってしまいましたが、もしや「自殺した男性を班長にさせて着服の罪を被せようとする企みがあったのではないか」など色々勘ぐってしまうニュースですね。
SNSでも波紋を広げています。
自治会役員の言い分は「特別扱いできない」というもの。障害者にはいつもこの「特別扱い」や「優遇」といった言葉が向けられる。
— 乙武 洋匡 (@h_ototake) July 31, 2020
もう少し“初期設定”の違いに目を向けられる社会であってほしいと切に願う。
「おかねのけいさんできません」男性自殺https://t.co/c7y34wCUtF
誰にも「できること」と「できないこと」がある。
— 東ちづる Chizuru.Azuma (@ChizuruA1) July 31, 2020
夫は歩けないので、時に「特別扱い」をしてもらう。聴こえて見えるから、聴こえない人や見えない人が困っていたら特別扱いをする。
お互いに「特別扱い」し合えばいい。
そんな「特別扱い」は言い換えると、「配慮」という。 https://t.co/k2hA4JBqa0
「おかねのけいさんできません」男性自殺 障害の記載「自治会が強要」 - 毎日新聞 https://t.co/Lzb1Db6F4r
— チキささ (@c_ssk) July 31, 2020
書かされた文章の中に「×ひとがたくさんいるとこわくてにげたくなります」とある。そういう人が三人に囲まれてこの文章を書かされたと思うと胸がつまる。
酷い……障害者差別だけではなく、PTAと同じように、自治会という、日本社会における閉ざされたコミュニティの制度や人間関係の歪みが、如実に現れた事件……
— おなか (@HNamachiri) July 31, 2020
「おかねのけいさんできません」男性自殺 障害の記載「自治会が強要」 - 毎日新聞 https://t.co/TEHpZZx9Vy
安楽死ハラスメント
「人権(Human rights)」とは、読んで字のごとく「人として正しいこと」となります。
となれば「安楽死」も許されるべきなのか、許されないのか
コロナ渦によって「死生観」といった話題に注目が集まっている今こそ向き合っていかなければならない
そういう時期が来ているのかもしれません。
でも「安楽死」が当たり前になれば寝たきりの病人や高齢者に対して
「おばあちゃん、いつ安楽死するの」
と言ったり、いわゆる「安楽死ハラスメント」的なことが社会問題になるということが現実に起こりうる危険性
そして「優生思想」的な発言が罷り通る社会に逆行してしまう
といった可能性も考慮しなければならないでしょうね。
ALS嘱託殺人事件は「思想」を動機とする殺人だった
前回の記事にも関連しますが、ALS嘱託殺人事件も「優生思想」に関連して注目を集めるものでした。
繰り返しになりますが、新型コロナウイルスにより倫理観にも「転換期」が来ている、とも考えてよいのかもしれません。
SNSの反応を視てみると「ブラックジャックに登場するドクター・キリコ」を連想する方が多いのが印象的でした。
日本人が安楽死と聞いて真っ先に思い浮かべるのはBJのドクターキリコだろうけど、あいつは個人の生命をどこまでも尊重してるんだよに。社会のために無駄な人間を殺そうなんて考えて実行した異常者とは比較にならない。
— ノザキハコネ (@hakoiribox) July 23, 2020
ALS患者への嘱託殺人容疑で逮捕された医師が「ドクターキリコになりたい」と言っていたことに触れてる記事だが、こんな形で『ブラック・ジャック』のタイトルを出されるとは、手塚も嘆くだろうて。キリコは彼なりの医師の矜持を持っていることを、度々描いてるんだけどなー。https://t.co/AuzD0r9zew pic.twitter.com/nXSICSuVsG
— のざわよしのり (@mad_yn) July 23, 2020
【闇】難病ALSの患者を"安楽死"させて逮捕された医師 大久保愉一氏と思われるTwitterアカウントが特定 @mhlworz
— 滝沢ガレソ (@takigare3) July 26, 2020
↓
漫画ブラックジャックに登場する、安楽死を生業とする闇医者『ドクターキリコ』に異様な憧れを抱いたツイートが多数発見される
「もうじきニッチな商売を始める」と意味深なツイートも pic.twitter.com/yJYg4oSEvk
逮捕された大久保容疑者自身もドクターキリコへの「憧れ」というものを以前からSNSに投稿していたそうです。
やはり金銭目的というよりは自らの「思想」が動機だったようですね。
大久保容疑者「老人医療に対して『やるせなさ』を感じていた─」
大久保容疑者はドクター・キリコへの憧れに加え、老人医療に対する『やるせなさ』ついても供述しているそうです。
「扱いに困った高齢者を『枯らす』技術」という本まで執筆していたというわけですから驚きです。
この証言を見ると、本ブログでも極端な例、典型的な例として何度か言及している植松死刑囚との共通点が見いだせますね。
「本人の意志に応じて安楽死を選択肢として認めるべき」
というのと
「障害者は死んだほうがいい」
というのは言葉ざわり、ニュアンスからいうと「正反対」といっても過言ではありません。
しかしながら、この二人の人間の考えは「優生思想」という点では一致しているのです。
論理のプロセスこそ違えど、「優生思想」という一つの結論に辿りついてしまう。
前回の記事で取り上げた野田さんの発言も似たような話ですが、それには「中学生のような発言」という批判もありました。
確かに普通の中学生でも言いかねないことですし、実際に有名人が公式アカウントに書いてしまったりすることです。
でもそれは医師でありながら嘱託殺人を犯してしまった医師、さらには大量殺人を計画し実行してしまった植松容疑者にとっては、紛れもない「動機」だったわけです。
※大久保容疑者と同じく嘱託殺人容疑で逮捕された山本容疑者については医師免許を不正に取得していたという報道もあります。もし事実ならまさにブラックジャックですね。
これらを敢えて良いように言えば、
「社会のことを憂いているからこそ抱いたものだ」
ともいえます。
ここまではいいですが、その考えに自己陶酔し、まさに自身をドクターキリコに投影していたのかもしれません。
私はブラックジャック読んだことないので分かりませんが、
「俺は社会にメスを入れてやる」
とか思っていたのかもしれません。
植松死刑囚もヒトラーを賛美するような発言をしていたとのことなので、こう考えると二人は「気質」的にも近いものがあるのかもしれない
と勝手ながら考察してみました。
これは防衛機制でいう同一視(Identification)なんでしょうか。
同一視(Identification) - 自分にない名声や権威に自分を近づけることによって自分を高めようとすること。他者の状況などを自分のことのように思い、感じ考え行動すること[6]。この同一視は他人から他人へ伝染する。
手塚治虫作品では「火の鳥」「アドルフに告ぐ」「きりひと賛歌」を読んだことがありますが、どれも期待を裏切らない名作でした。
「ブラックジャック」もそのうち読みたいですね。
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